フェンダーチャンプ MODEL AA764 の製作


真空管ギターAMPを製作するのが初めての方でもあまり難しくなく確実に完成させるにはシングルAMPが一番良いと思います。 「自分は小出カのAMPは使わない、無駄だから大きな出カの物を作りたい」 と思われている方もいるかと思います。 しかし階段を上る時と同じで、初めの一歩は一段目から上って行かなければなりません、いきなり十段目、二十段目を上ろうとしても失敗します。 簡単なシングルAMPとあなどってはいけません、小出カのAMPでも製作のノウハウは一杯詰まっています、使ったお金や労力は無駄にはなりません、すばらしいAMPを作るための投資です。
色々なAMPを製作しそのノウハウを自分のものにすることが出来ればもう怖い物なしです、複雑で大出カのAMPでも製作することが出来ます。 回路図一枚あれば実体配線図も描けます、どの様な部品を使ったら良いかも分かります、合理的な部品配置や配線も出来ます。

製作するのはどんなAMPがよいか色々検討をしてみましたが、人気のあるフェンダー チャンプにしてみました。 このチャンプには数種類のバージョンが有りますが、トーンコントロールの付いたMODEL AA764が良さそうです。
回路図を見ますと、どのチャンプもB電源回路が貧弱です、電解コンデンサーの容量も少なくチョークトランスも使われていません、ハムやノイズが心配ですが、とりあえず回路図どうりに製作して見ることにします。(チョークトランスが付いているバージョンもある)
シャシー上の部品配置は改良をするかも知れませんのでチョークトランスを乗せるスペースを空けておきました。

今回製作するAA764の回路はオリジナルAMPと同じですが使用部品も配置もオリジナルとは異なります、全く同じにコピーするのも良いと思いますが、現在では同じ部品を入手するのは不可能に近いと思います。 全く同じ配置、同じ部品にしなければ同じ音にはならないですから、無理をして高価な純正部品を探さなくてもいいと思います。 オリジナルAMPでも故障して真空管や部品を取り替えたら音が変わったと言う話も聞きます。
製作したものはAMP部分だけでキャビネットは製作していません、このまま使うのも良し、木製のケースも製作して持ち運びに便利なようにしても良いと思います。

回路説明
入力は2回路あり入力インピーダンスは(1)が1MΩ (2)が136KΩです、また(2)の方は感度を(1)の入力の1/2にしています。
初段管は12AX7を使用し、ここで増幅された信号はトーン回路に入りBassとTreをコントロールします。 トーン回路を出た信号はLEVER VRで音量調整をした後、もう片方の12AX7に入りパワー管をドライブするのに必要な電圧に増幅します、そして6V6GTでスピーカーを駆動するのに十分な電力までに増幅しスピーカーを鳴らします。
負帰還(NFB)は出カトランス二次側から2.7KΩを通って前段のカソードに戻しています、負帰還量は約6dBでした。

オリジナル チャンプ AA764は6V6GTのプレートに本機よりも高い電圧を掛けています、本機もオリジナルに近い位の電圧を掛けています。 もう少し電圧を下げた方が良いと思いますが、後でパワーアップ改造をする予定があるのでこのまま使うことにします。  6V6GT以外は使わないと言う場合は、電源トランスの接続を240V端子に変更して下さい、他の大型管を使う場合は大丈夫です。
それでもオリジナルに近い電圧で使いたいと言うでしたら電圧はこのままで使って下さい。


最大出カ     4W (ノンクリップ)
NFB        6dB
残留ノイズ    4mV (チョーク有り 入力ショート TONE VR中間、LEVEL VR最大)


        TONE回路の周波数シュミレーション (実測値ではありません)



 部品リスト

真空管の銘柄はとりあえず入手できる物をそろえます、中国製やロシア製が一般的です、国産メーカーはまず手に入らないでしょう、仮に見つけたとしても高価です。 修理等のことも考えてスペアーをもう一組余分に持っていた方が良いと思います。

電源トランスはもう少し小さくても良いのですが、ノグチトランスにはこのPMC-100Mの下は適当なものがありません、電流値が一杯のPMC-55Fがありますが (誤り!! PCM-55Fではヒーター電流が足りませんでした) PMC-100と価格が少ししか違いません。 他メーカーの物なら、二次側が250V〜280V 電流は70mA〜80mA位ヒーター電流は2A以上ある物でもOKです。

出カトランスはPMF-6Wで1次側のインピーダンスは5KΩ、2次側は8Ωまたは4Ω(スピーカーに合わせて下さい)で使用します。

シャシーはアルミの弁当箱型の物でも良いでしょう。 ノグチトランスの「お助けシャシー」の中にS-100 (300x160mm) と言うシャシーが販売されています、トランスの穴開けもされていていますし寸法的にも丁度良いと思います。 ここでは作り易くするために大き目のシャシーを使用していまが、もう少し小型の物でも大丈夫です。
ノグチトランスのホームページは     http://www.noguchi-trans.co.jp/cgi-bin/cgis/genrelist.cgi 

抵抗は酸化金属皮膜(酸金)1W型を使いました、小型でどこでも入手できると思います。 ばらばらのW数を購入するより全部1Wに統一した方が買い易いでしょう。 その他に5Y3の8pinから6V6GTの4pinにつながる1KΩはセメント抵抗の3W型を使いました、また8pinのカソード抵抗 470Ωはセメント抵抗の5W型を買うつもりでしたが、無かったので510Ω/5Wを買いました。 各抵抗は耐圧等十分な余裕を見ていますが、もう少しワット数の小さな物でも大丈夫です。

コンデンサーはTONE回路の250pFはスチコンまたはマイカが良いと思います、0.047uFと0.1uFはフィルムタイプで良いでしょう、0.02uFは0.022uFでOKです、耐圧は500V〜600V位の物を使って下さい。 ブロック型の電解コンデンサーは22uF/450Vが2回路入った物を使用します。
整流管で整流された後に入れる22uF/450Vの電解コンデンサーは容量が規定されています、大きな容量にしますと大きな充電電流が流れて整流管を壊します、必ず22uF以下の容量にして下さい。

真空管ソケットはモールド型とタイト製がありますがどちらを使っても良いでしょう。 ハム、ノイズが心配でしたら12AX7のソケットは9pinシールド付きにして下さい。 本機はシールド付きにしてみましたが、ノイズに大きな違いは有りませんでしたから、シールド無しでも大丈夫だと思います。 部品リストにラグ板を書くのを忘れました、ラグ板は3P〜7P位のものを少し余分に購入しておいた方が良いと思います、急に必要になる時があります。

電源回路が貧弱でリップルが取り切れずハムが出ないか心配でしたが、スピーカーを付けて音出ししましたらハム音は僅かでしたからこのまま完成させましたが、後にチョークトランスを付けましたら残留ノイズが大幅に下がりましたので、チョークトランスを付けることにしました。
各部品は入手できる物を上手く使って下さい。 全て指定どうりの物でなければならないわけではありません。 (2006/09/10)

--実体配線図と内部写真--

--パワー管変更--


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