調整および確認
組み立て半田付けが全て終わり配線間違いが無いか何度も見直しましたら、テスターで電源回路を点検します。 TONE VRは中間、音量VRは最小、バイアスVRは中間にセットします。 真空管はまだ差し込まないで下さい。 電源もまだ入れないで下さい。
まず最初に整流管の8pinにテスターを当てB電源回路がショートしていないか確認します、この時使うテスターは針式(アナログタイプ)のテスターの方がよいと思いますが、無ければデジタルテスターでもOKです。 回路には電解コンデンサーがつながっていますから、テスターの針は右側に大きく振れてから左側に戻って来ます。 この様になれば電源部はOKです。
それから電源を入れる前に負帰還抵抗 R15 (820Ω)の片側を外しておいて下さい。 調整が終わったらまた取り付けます。
次に電源をいれパイロットランプ(LED)が点灯するのを確認します。 OKでしたら今度はテスターで各真空管のヒーターpinを当り、6.3Vの電圧が掛かっているか確認します。
次にテスターで出カ管(6V6GT)のグリッド(5pin)を当りマイナス電圧が出ていることを確認します、このままバイアス調整VRを回して−25V〜−45V位まで変化するか確認します、これは二つの出カ管のグリッドで同じ電圧が出ているか確認します。 正常ならバイアス調整VRは右いっぱい、−45V位出ている状態にセットしておきます。 ここで一度電源を切ります。
マイナス電圧が出ない、または低いと言う場合はサービスノートのページを参照して下さい。 必ずマイナス電圧が正しく出る様にして下さい。
今度は全ての真空管を差し込みます、スピーカージャックにはダミー抵抗を差し込みます。 音量VRは最小になっているか確認してください。 電源を入れます、最初に2本の出カ管のグリッド(5pin)に−45V位の電圧が掛かっているか確認します、この時各真空管のヒーターが点灯しているかも確認します。 次にB電源回路や各真空管のプレートにプラス電圧が掛かっているかテスターで確認して下さい、確認できましたらここで電源を切ります。 ここまで緊張しながら作業を続けて来ましたので、一休みしてください。
バイアス電圧調整 (現在バイアス調整VRは右一杯 −45V位電圧が出ている所にあります)
今度は出カ管に流す電流の調整をします、はじめに6V6GTのカソード抵抗10Ωの場所を確認しておきます。
AMPの電源を入れテスターを6V6GTの8pin(10Ωの両端)に当てます、現在は出カ管に電流が流れていませんから電圧はほとんど出ていないと思います。 次にバイアス調整VR(VR5)を少しずつ回して行き、電圧が0.3Vになるように調整します。 6V6GTは2本有りますから2本のカソードそれぞれが0.3Vになっているか確認します。 この10Ωの抵抗の両端に0.3Vの電圧が出ていると言うことは、ここに30mAの電流が流れています。
2本の特性が揃っているペアー管であれば大体同じカソード電圧になると思いますが、もし電圧が大きく(0.05V以上)不揃いなら別のペアー管に取替えます、少し(0.05V以下)の不揃いなら良しとします。 この少しの不揃いをVRで調整することは出来ますが今回はそこまでは行いません。
カソード電圧が0.05V違っている場合 0.05Vは電流で5mAの違いが有ります、片方の管が30mA、もう片方の管が35mA流れるとしますと、10%以上もペアーがずれていることになります。 出カトランスに流れる電流もアンバランスになってしまいます。
2本の管の電流値が10%以上もずれている時は別のペアー管に取替えて下さい、希望としては5%以下にしたい所です。
バイアス調整は今回行ったやりかたの他に、プレート電流を測ったり、出カトランスの電圧降下を測ったりする方法がありますが難しくまた危険です、今回のカソード電圧を測る方法が簡単で最も安全だと思います。
バイアス電圧はどのようにして決めるのか?
バイアス電圧はAMPの設計時に Ep-Ip特性曲線上で作図をして決めますが、いつも計算をしたり作図をするのはめんどうです。 もっと簡単に知るにはメーカーが発表している真空管の規格表の中に、動作の推奨例がありますから、これを参考にすると良いと思います。 下に代表的な真空管の動作例を載せました。 実際のAMPの全てが下の例のような動作をさせているわけでは有りません。
動作確認
出カにダミー抵抗を接続します、入力にはまだ何も接続しません、TONE VRは中間に、音量VRは最小にして電源を入れます。 ダミー抵抗8Ωの両端の電圧をミリボルトメーター(テスター)で測り電圧が何も出ていないことを確認します。
ここまで全てOKでしたら、調整前に外しておいた負帰還抵抗 R15 を元の様に半田付けします。 再度電源を入れて発振していないことを確認して下さい。(ダミー抵抗の両端に電圧が出ていないか確認する、オシロがあれば波形も確認する) もし発振する様でしたら、出カトランス1次側を入れ替えます。 詳しくはサービスノートを参照して下さい。
ここまでOKでしたらこんどはスピーカーを接続し何も音(ノイズ)が出ていないことを確認します。 本機はVR最小の時にはスピーカーに耳を付けてもハムやノイズは全く聞こえません、次に音量VRを上げていった時”サー”と言う音が僅かに大きくなって行けばOKです(ハム音は有りません)、最後に最大出カの測定をすれば完璧です。 これでギターAMPが完成しました、思い切りギターを弾くのも良し、1日中真空管AMPをながめていても良いでしょう。
ザー音が非常に大きい、ハムが出る、発振すると言う様な時はサービスノートの頁を参照してください。
固定バイアス式AMPのメンテナンスについて
本機のような固定バイアスのAMPは出カ管のグリッドにバイアス電圧(マイナス電圧)が掛からなくなると、出カ管に大きな電流が流れて出カ管を壊してしまいます、また出カトランスの巻き線焼損、断線と言うことにもなりかねません。
AMPの電源を入れた時に出カ管のプレートが赤熱していないか時々(思い出したら)真空管を見てください、また半年か一年に一度位で良いですから、カソード抵抗10Ωの両端の電圧が正しく掛かっているか確認すれば完璧です。
しばらくAMPを使っていると出カ管の特性が少しずつ変化して、管に流れる電流が変わります、設定値より大きく変わっていましたら、バイアス調整VRで設定値に戻してください。 少し位のズレは問題ありませんからあまり神経質になる必要はありません。
バイアス調整をしても設定値に調整できない、2本の出カ管の電流が揃わないと言う時は、出カ管の寿命ですから新しい出カ管に取り替えてください。 また最大出カが低下してきた時もそろそろ寿命に近ずいて来ましたから、出カ管を取り替えてください。
新しい出カ管に取替えた時は”バイアス電圧調整”の所を参考にして、必ずバイアス電圧調整を行って下さい、ペアー管であっても調整は必要です。
固定バイアスと自己バイアスはどちらが良いか?
固定バイアスは真空管のグリッドにマイナス電圧を与える回路が必要ですが、電圧利用率が高いので自己バイアスのアンプよりも大きな出カを取り出すことが出来ます。 しかしマイナス電圧が無くなってしまったら、アンプは短時間の内に故障して被害がどんどん拡大してしまいます。
一方自己バイアスはカソード抵抗に発生した電圧によりグリッドにバイアスを掛けていますから、マイナス電圧を発生させる回路は必要ありませんし、上に挙げたような危険もほとんどありません。 しかしカソード抵抗があるために流れる電流が制限されたり電圧のロスがあり少し出カが下がってしまいます。
出カをあまり欲張らなければ自己バイアスのアンプが良いでしょう、アンプ製作時の調整箇所も少なく、定期的なバイアス調整の必要もありませんし、故障した時の被害も少なくてすみます。 また出カ管を取り替えた時にもバイアス調整は必要ありません、この様なことから自己バイアスのアンプを薦めます。
出カ20Wを境目にそれ以下は自己バイアスに、20W以上は固定バイアスにするのが良いと思います。
(2007/07/10)
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