4RHH2 SRPP LIN AMP

手許に双三極管の4RHH2が何本かあるのでステレオ ラインアンプを製作してみます。 あまり聞きなれない型番ですが、TVチューナー管として当時は多数使われていました。 特性的には12AT7と12AU7の中間位で、使い道がたくさんありそうですが、ヒーター電圧が4.2Vなので一寸使いにくく、オーディオ用にはほとんど使われませんでした。 でもヒーター電圧さえうまく合わせれば良いわけですから、今回は3本直列にして12.6Vで使用します、これでヒーター電圧は簡単に解決です。
4RHH2でなくて12AT7や12AU7でも良いのですが、オーディオ用の国産真空管は現在非常に高価で、1本数千円もするために何本も購入できませんが、TV球なら1/5程の価格で購入できます。 またこれらの真空管は日本の真空管製造の頂点の頃に作られたもので、性能や品質がもっとも優れていた時代のものです。 現代のわけの分からない外国製の真空管など比べようも無いほど高品質です。


入カはCDやチューナーを接続する様に設計しましたから、PHONO用のイコライザー回路はありません。 最初はフラットアンプだけにしようかと思いましたが、バスブーストがほしい時もありますから少しだけブースト(ラウンドネス)する回路を付けました。



回路説明
入カ信号はかなり大きいので全く増幅する必要はありませんからカソードフォロアーにそのまま入れます、特にCDからの信号は大きすぎるくらいあります。
カソードフォロアーを出た信号はラウンドネス回路に入りここで0.15倍に減衰します。 S1はラウンドネスのON、OFFスイッチでOFFでバスブースト、ONで周波数はフラットになります。 そしてVRで音量調節された信号は次にSRPP回路に入りここで約30倍増幅されて出カします。 (トータルの増幅率は4.5倍になります)


入カは3回路付けました、まだ少なければいくらでも増やすことは出来ます。
使用した抵抗はアンプ部分には金属皮膜の1/2W型を、B電源回路には1Wの酸金を、ヒーター回路には10Wのセメント抵抗を使いました、5W型でも大丈夫ですが少し発熱しますから余裕を見て10W型にしました。
カップリングコンデンサー(0.047uF、0.22uF、1uF)はフィルムタイプの耐圧250Vを、ラウンドネス回路の0.047uFは耐圧50Vの物を使いました。
平滑回路の電解コンデンサーに470uFの大きな物を使っていますが、これも手持ちにあったから使っただけで、もう少し小さな容量でも大丈夫です。 リップルを少しでも少なくしようと思って使っただけです、耐圧は200V以上れば良いでしょう。 整流用のブリッジダイオード(600V/1A)も同じ基板に取り付けています。
LEVEL VRは密閉型の50k B型2連を使用しました。
ケースはリード製(LEAD)の31cmx20cmx10cmの大きさです、かなり前に購入し箱をなくしてしまったので型番は分からなくなってしまいました。 前面と後面がアルミで底板と天板が鉄製です、鉄板は穴あけ加工が大変ですから出来たら全部アルミ製の方が良いでしょう、特にプリアンプではケースやシャシーは非鉄金属の方が良いと思います。

回路図は片チャンネルしか描いていませんが、本機はステレオですから同じ回路がもう一つあります、ただし電源はこれ一つで二つのアンプに供給しています。

部品が全て揃ったら、ケースに穴あけの位置決めをします、真空管やラグ板やコンデンサー基板を実際に置いて大体の見当を付けて下さい。 入カ側と電源トランスは最も離れる様な配置にして下さい、またトランスと真空管も近すぎないようにして下さい。
入カ端子からセレクタスイッチまではシールド線で配線しました、セレクタスイッチ部分は配線が混み合って間違いがおきやすい所です、何度も確認しながら半田付けをして下さい。 配線は隣の回路に信号が飛びついてクロストークが悪化しないような配線をして下さい。
  ラウンドネス回路は小さな基板を作りラウンドネススイッチの上側に接着剤で貼り付けています、その他の抵抗やコンデンサーは大型のラグ板1枚に全て取り付けました。
真空管ソケットは1mmのアルミ板をL型に加工して写真の様に取り付けて下さい、ソケットの取り付け向きを実体図と同じ向きにして下さい。 真空管ソケットのセンターピンはアースして下さい。 各アースはまとめてアースポイントの所の1点で落として下さい。
真空管ソケットに付ける1kΩは先に半田付けしておかないと後からでは付けられ無くなります、配線や半田付けの手順を考えながら製作して下さい。 各部品が接近しすぎますと半田付けがしにくくなります、本機もこのケースの大きさでは半田付けがし難い所がありました、真空管ソケットとラグ板との間隔があまり無く、真空管を横置きしている為に、部品点数が少ない割にはかなり製作し難いアンプです。 真空管を縦置き(パワーアンプの様な形)にした方がかなり楽に製作できると思います。



入カ回路のセレクタスイッチ部分はシールド線が込み合っていますので実体図には描きませんでした。
ラグ板に2ヶ所シールド板を付けていますが、これは信号が隣の回路に飛びつかない様にしたものです。



調整および確認
配線やCRの取り付けが全て終了し誤配線がないか確認しましたら、AC100V回路がショートしていないか確認して下さい、OKでしたら今度はB電源部分がショートしていないか、47uF/200Vの電解コンデンサーにテスターを当てて確認して下さい。 またヒータ回路もショートしていないか確認して下さい。
全てOKでしたら、次に真空管を全て差し込んで電源を入れます。 この時煙が出ていないか、焼けた匂いがしないかも注意して下さい。 次に各部の電圧を測り正しく電圧が出ているか確認して下さい、また真空管のヒーターも点灯しているか見て下さい。
これらがOKでしたら今度はヒーターに12V位の電圧が出ているか確認して下さい、12.6V以上又は12V以下の電圧でしたら4Ω/10Wのセメント抵抗を増減して、12.6V〜12Vの範囲になる様に調整して下さい。
調整および確認が終わりましたら測定します。 測定器が無い場合はアンプとスピーカーを接続してハムやノイズが出ていないか調べて下さい、ハム、ノイズが全く出ない様に仕上げて下さい、本機はLEVEL VRを最大にしてもハム、ノイズは全くありませんでした。

測定
下図が実測した周波数特性と歪率特性です。 周波数は5Hz〜160kHz -3dB、ラウンドネススイッチ(S1)をOFFすると10Hzで+9dBブーストします、S1 ONで周波数はフラットになります。
歪率は100Hz、1kHz、10kHz共良く揃っていて好ましい特性です、出カ電圧の測定が10Vまでしかありませんが、発振器の出カが10Vしか無いのでこれ以上の電圧は測定しませんでした。 残留ノイズは、入カショート、LEVEL VR最大で0.3mVでした。 VRから4RHH2のグリッド(7pin)に行くケーブルをシールド線にすればもう少し残留ノイズが減るかもしれません。


音質は丸みのある真空管らしい音です。 音の良し悪しは味覚と同じで、自分は非常に気にいった音でも他人はその様に思わない人もいます、でもそんなことは気にしません、自分が良いと思えばそれで良いのです、他人の好みに合わせる必要はありません。 また接続する機器やリスニングルームでも音質は大きく変化します、少しでも良い音(心地よい音)になる様にこれからも努力をして行きたいと思っています。





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(注意) 本ページと同じものを製作し同じ結果が出なくても当方はその責任を負いません。本ページには高い電圧を扱っている所があります、ショートや感電等の事故で人体への損傷、障害、死亡また火災等が起きてもその責任を負いません。