超小型オーバードライブ、ディストーションの製作 < OD-FT1.5 >
イージードライブ スペシャルバージョン <ES-15S> のゲインをもう少し上げたい、というメールをいただきましたので、回路を再検討してみました。
このまま回路を変更せずにゲインを上げるにはFETを取り替えるのが一番簡単です。いま付いている、2SK-117GRを2SK-369GRに変えてみましたところ、約12〜15倍位のゲイン アップがありました。これで以前よりも歪み易くなったと思います。
これよりもっとゲイン アップさせたい場合は二段増幅にするのが簡単ですが、小さなケースの中に入るかどうかが問題です。出来るだけ部品を少なく、小さな基板に組めるようにしたのが、下の回路です。 今回は新しく作らずに<ES-15S>の内部の基板だけを入れ替えました。
電源電圧 1.5V
増幅率 100倍
残留ノイズ 0.06mV (入力ショート、DIST VR中間、LEVEL VR最大)
回路はOD-FS1.5-Bに似ていますが、大きな違いは一段目と二段目を直結にしているところです、これでカップリング コンデンサーと抵抗が省略できました。 トランジスターは2SC-372Yを使いましたが、2SCタイプの物ならほとんど使えると思います。
調整は始めに一段目の回路を作り動作の確認をします、信号を入力した時に、波形の上下が同時にクリップする様に、FETのソース抵抗330Ωを増減します、使用したFETのIdssは2.5mAでしたが、それ以外のIdssの物はソース抵抗の調整が必要になります。調整は一段目だけで、次のトランジスタ部分は調整の必要はありません。
DIST VRで信号の上下のどちら側でもクリップさせることが出来ます、このVRを最小にすると動作点が大幅に狂うので増幅しませんが、これで正常です。 本来ならエミッタに抵抗を入れたいところですが、スペースがありません。
DIST VRを左から右へ回した時のクリップ波形の変化
本機は小さな基板、大きな増幅、そして小さなケースに回路を押し込んでいるので発振の危険があります。 小型の6pinトグルスイッチはシールドが有りませんので、入力を開放にするとどうしても発振が止まりませんでした、しかたが無いので9pinのスイッチ(ミヤマ MS500MB)に換えて中点をアースしシールドの代わりをさせています。これで何とか使えるようになりました。
どうしても発振が止まらない場合は、トグルスイッチを取ってしまう(バイパスしないでディストーション専用)様にしても良いかも知れません、この方が安全です。
基板をVRに付けたところ
基板は拡大してあります、製作する時は現物に合わせた大きさにして下さい、図は半田面から見たもので部品は裏側に付きます。写真と基板図とは少し違いがありますが基板図の方を参考にして下さい。
アルミケースに穴あけをする前に、各部品がぶつかり合ったり、接触したりしないよう配置に注意して下さい、特に乾電池(電池ケース)を取り付けるスペースが少ないです。
ディストーション専用にしてトグルスイッチを無くしてしまえば、この場所に乾電池を置くスペースが出来ます。
ギターに直接差し込まなくても良いのなら、ケースを大きくして足踏み式の物にした方が製作はずっと楽になります。 また、電池も単二や単三などの大きな物に出来ますから、単四電池よりも長期間使用することが出来ます。
VRのカーブについて
本ホームページで使用しているVRは指定の無い限り全てB型です。
注意その1
電源電圧が1Vに下がると動作しません、最低でも1.3V必要です。
このAMPは少し電圧が下がると使えなくなってしまうので、単四アルカリ電池一本で何時間くらい持つのかテストしてみました。 AMPを動作状態にして新品の電池が1.3Vに下がる時間を計りましたら、連続で300時間以上動いていました。これは毎日一時間ずつ使うとして、約10ヶ月間使えることになります。 ただし断続的に使うと、休んでいる間に電池が少し回復しますので、実際はもう少し長い期間使えます。(電源入れっぱなしで300時間目でも、まだ電圧が1.3Vに下がりませんので、これ以上は中止しました)
電池の取替え時期の目安はDIST VRの変化具合が変わって来たら、そろそろ電池を取り替えたほうが良いでしょう。(同じツマミの位置で、今までと同じ音が出なくなる)
注意その2
高域発振していると発振音は聞こえません、またパソコン オシロでは発振波形は表示でき無い場合があります。
発振している時に、アンプとスピーカーを接続して出力を上げると、スピーカーを傷つけることがあります。発振の確認にはオシロスコープやミリボルトメーターが必要です。
この様な状態の時や、間違った使い方で、アンプやスピーカーを壊しても当方は一切責任を負いません。
(2004/03/15)
オーバードライブ、ディストーション < OD-FS1.5-BII >
前回製作しましたOD-FT1.5は、電圧が1Vに下がると動作しなくなってしまいますので、(それでも十分使用に耐えられますが)1Vでも動作する物をもう二種類紹介します。
下に回路図と基板図を示します、回路はOD-FS1.5-Bとほとんど同じです。 ケースに入れて完成はしていませんが、万能基板に組んで動作の確認はしました。
電源電圧 1.5V
増幅率 72倍
残留ノイズ 0.25mV (入力ショート、VR最大)
こちらのAMPにはDIST VRがありません、VRをつけても波形の変化が少ないので、非対称波形で固定しています。
ゲインは十分高いのですが、もっと高くなります。 回路定数はそのままに、FETを2SK369GRに取り替えました所、増幅率が175倍になりました、このままTrを2SC1815GRに付け替えましたら、230倍になりました。 どれ位の増幅率にするかは音出しをして決めて下さい、72倍も230倍もそれほど大きな違いはないかも知れません。
FETやTrを取り替えれば増幅率は上がりますが、あまり大きくしても、しょうがないと思います、大きくすれば他の障害が出てきますから、程々が良いでしょう。
プリント基板はVRに半田付けせずにシャシーに貼り付ける様になりますから、部品は銅箔面に取り付けます。
このAMPもトグルスイッチは9pinの物にして中間の端子をアースしてください。
電源電圧が1Vの時でも約14倍増幅しています(2SK117+2SC372Y)が、これ位の電圧になったら電池を取り替えた方が良いでしょう。
< OD-FF1.5-II >
このディストーション回路もOD-FF3-TBとよく似た物ですがDIST VRの働きを少し変えてあります。 ゲインは本機の方が大きくしてありますので、こちらの方がたくさん歪みます。
下に回路図と基板図を載せました、万能基板に組んでテストしましたが、ケースに入れて完成していません。
電源電圧 1.5V
増幅率 85倍 (2SK369GR+2SK117GR) 45倍 (2SK117GR X2)
残留ノイズ 0.2mV (入力ショート、DIST VR中間、LEVEL VR最大)
このAMPはFETによってゲイン配分が変わります。 初段に2SK369を、二段目に2SK117を使うと、初段のゲインが高くなります。 また、2SK369を二段目に使うと、初段より二段目のゲインが高くなります、これは入力信号の大きさによって、初段も歪むことがありますので、出音も微妙に変わるかも知れません(変わらないかも知れません)、どちらが良いかは音を聞いて決めればよいでしょう。 回路図は2SK117GR X2と書いてしまいました。
(どちらのゲインが高くなっても二段目で歪ませていますが)
これほどゲインはいらない場合は、初段、二段とも2SK117GRにすればゲインは約45倍になります、この時電源電圧を1Vに下げると約10倍になりました。
製作は、始めに初段の回路を作り調整および動作の確認をします、調整は信号を入れたとき波形の上下が同時にクリップする様に、ソース抵抗を増減します。
ここが終わったら二段目を作ります。 二段目は調整の必要はありませんが、DIST VRを左右に回してクリップの仕方が変わるのを確認して下さい。 このAMPは対称にクリップさせた時の波形が他のAMPより少しだけきれいです、濁った歪み音で無くて、きれいな歪み音かもしれません。(音を聞いていないので解からない、波形を見てそう思っただけです)。
DIST VRを左から右へ回した時のクリップ波形の変化
波形は上の写真の三種類しか出ないのではなくて、VRで左の波形から右の波形へと無限に変化します。 また、入力信号の大きさで、クリップのない波形から矩形波まで、自在にコントロールできます。
基板は、DIST VRの端子に直接半田付けして取り付けます。 トグルスイッチも9pinにして、中間の端子をアースして下さい。 製作は他のAMPと同じように作ればよいでしょう。
(2004/04/15)
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