エフェクター サービスノート

エフェクターを製作したが正常に動作しない、また故障してしまったと言うような時に見ていただくページです。

用意するもの
1)  テスター ・・・・・・・・・・・・・・ アナログ、デジタルのどちらでもOKです。
2)  信号の出るもの ・・・・・・・・ 発振器またはCDやラジカセ、またはefu氏のフリーソフト、WaveGene(WG)でもOK
3)  VR回路 ・・・・・・・・・・・・・・・下の写真の物です。
4)  シグナル トレーサー・・・・・パソコンオシロアダプターまたは下の写真の物でOKです。 
5)  接続ケーブル、各種

         VR回路                シグナルトレーサー

発振器または、ラジカセのイヤホン端子と、図1のVR回路をケーブルで接続します。
発振器または、ラジカセから音(音楽でも信号でもOK)を出します、音の大きさは適当に、VR回路のボリュームで調整する、あまり大きくしない。 (ラジカセに1KHz位の正弦波の発振音を録音して、それを信号源にしても良い)
図1のVR回路の出カにシグナルトレーサーの針先(コンデンサーから出ているリード線)を当て、ボリュームで音の大きさが変わるのを確認します。 (シグナルトレーサーを使用する時はコンデンサーかイヤホンジャックを持って行います)
次にVR回路のOUTとエフェクターのINとをケーブルで接続します。 エフェクターのOUT端子にプラグを差し込んでおきます。(このプラグを差し込まないと電源が入らない)

上図の様に接続します。


今回はOD-FF3.0-TOの回路で説明しますが、メーカー製のエフェクターでも自作の物でも故障箇所発見の手順はみな同じです。



配線間違いが無いか十分確認してください。 ラジカセの音が各ポイントに出ているか確認をして行きます。

みの虫クリップはエフェクターのアースに挟んでおきます。 エフェクターの電源を入れます。
まずはじめに、(C)点にシグナルトレーサーの針先を当てて音を確認します、音が出なければこれより前の、フットスイッチや、入力ジャック周りを調べます。音が出ていれば次の(D)点にシグナルトレーサーの針先を当てます。 ここに音が出なければ、テスターで(D)点のドレイン電圧(1.9V前後)が掛かっているか確認します。 異常に低いか高い場合はFETの不良が考えられます、またFETの半田付け不良かドレイン抵抗の断線が考えられます、また(S1)点のソース電圧(正常時 0.2V位)が異常に高い(3V位)時はソース抵抗の断線、又は半田付け不良が考えられます。

(D)点に音が出ていればこれより前の回路は正常と思われます。 次に(E)点にシグナルトレーサーの針先を当てます、ここに音が出なければ、0.1uFのコンデンサーの不良と思われます。 ここまで音が出ていれば次に(F)点にシグナルトレーサーを当てて音を確認します。
音が出なければ(E)〜(F)の間に不具合があります。
テスターで(F)点のドレイン電圧(2.1V位 DIST VRの位置で変わります)とソース電圧が正常に掛かっているか確認します。 ドレインに電圧が出ない時はドレイン抵抗1KΩの断線を疑って下さい、異常に低いか高い場合はFETの不良も考えられます、また(S2)点のソース電圧(正常時 0.15V位 VRの位置で0V〜0.3V位まで変化します)が異常に高い(3V位)の時はソース抵抗(ソースVR)の断線、又は半田付け不良が考えられます。
ここまで正常なら今度は(G)点で音を確認します、ここに音が出なければ1uFのコンデンサーの不良です。

(G)点まで音が出て(H)点で音が出ない、TONEの効きがおかしい時は、(G)〜(H)間の不具合です。TONE回路の配線間違い、またはCRの定数間違いの可能性があります。 (H)点まで音が出ていたら、次は(I)点で音が出るか確認します、音が出なければFETの周辺を調べます。(H)の電圧は0.8V前後、(I)の電圧は1.4V前後です。
(J)点で音が出るのに、アンプを接続すると音が出ないと言うときは、OUTジャックの半田付け不良、または接続間違い、または接続ケーブル(シールド線)の不良が考えられます。

フットスイッチを押しても切り替わらない時は、スイッチの不良(あまり無い)、または配線間違い(これが多い)を調べてください。
LEDが点灯しない場合はLEDの足の極性間違い、または電流制限抵抗3KΩの抵抗値などを調べてください。
LEDが点灯したまま、またはLEVEL VRを回すと点いたり消えたりする時は、ダイオード1S1588の向きの間違いかもしれません。

ザーと言うノイズが非常に大きい
電源に乾電池を使っているエフェクターでは、ノイズはほとんど出ないはずですが、それでもノイズが出ると言う場合はどこかに不具合があります。
ノイズはAMPのゲインが高くなればなるほど大きくなるのが普通です。 考えられる原因として、FETやTrから出るノイズ、ゲート抵抗、ドレイン抵抗から出るノイズ等があります、これらから出る場合はその部品を変えてみるしか方法がありません、上の回路の場合抵抗は普通のカーボン型を使っていますが、全くノイズは出ません。 どうしても気になると言う場合は、金属皮膜抵抗に替えてみるのも良いと思います。

ハム音が出る
アースが確実に取れているか(シャシーにアースされているか)確認して下さい。 密閉型のVRを使った時はVRの金属カバー部分もアースして下さい。



OPアンプを使ったエフェクター(OD-1)も調べて見ます。   乾電池の電圧は大丈夫ですか?


電圧値はテスト用に製作した物を測定した値です。 いくらかの誤差は有ると思います。(アースを規準にして測定)

上図の様に接続します。


エフェクターの入力に信号を加えます、上の回路図で基板の1の所が入力です。
シグナルトレーサーをA点に当て信号音が聞こえるか確認します、ここで聞こえなければここより前、シールドケーブルから入力ジャック辺りまでを調べます。
A点で音が聞こえたら次はB点にシグナルトレーサーを当てて音が出ているか確認します。ここで音が出ていなければTrの周辺を調べます、まず電圧が正常に掛かっているか調べます。
A点の電圧は2.8V位、B点は2.4V位です。 B点の電圧が異常に低い場合はTr不良が考えられます、またはTrの取り付け方向が違っているかも知れません。
B点まで音が出ていたら次はC点で音が出るか確認します、ここで音が出なければICの8pinに9Vが掛かっているか確認します、また他のpinも表記した位の電圧が掛かっているかテスターで確認します、またICの付け間違い(取り付け向きが違っている)にも注意して下さい。
ICの4pinがアースされているかも確認してください。

C点まで正常でしたら同じ様な要領でD点、E点、F点まで確認します。 最後にVR1、VR2のツマミを回してVRが正常に機能しているか確認します。



Fuzz Faceの場合

注意
回路図に書かれた電圧は参考程度に見てください、測定時の室温は約10℃でゲルマTr(2SD-187)のFuzz Faceには少し寒い温度でした。 室温が上がると回路図に書かれた電圧が変化します。 ゲルマTrを使ったFuzz Faceは電圧測定よりもシグナルトレーサーで信号を追って行った方が楽に故障発見が出来ると思います。
Fuzz FaceにはトランジスターがNPNのタイプとPNPタイプがあります、下の回路図左側がNPN、右側がPNPタイプです、PNPタイプは電池と電解コンデンサーの極性がNPNの逆になりますが他は全く同じです。 NPNタイプは電池が+アースですから測定電圧はマイナスになります。



最初に古い乾電池でしたら新しい乾電池に取り替えてください。
ラジカセ+VR回路+Fuzz Faceをケーブルで接続します、Fuzz FaceのOUT側のジャックは電源スイッチも兼ねていますからプラグを差し込んでください。 電圧が出ないと言う時は出カジャックの接続間違いや半田付けを確認して下さい。

ラジカセから信号を流しておきます、シグナルトレーサーをA点に当て音が出るのを確認します、音が出なければ、フットスイッチ、入力ジャックの配線違いや半田付け不良を見直してください、また接続ケーブルの接触不良も疑ってください。
A点がOKでしたら次にB点に音が出るか確認して下さい、音が出なければB点の電圧を測ります、電圧が出なければコレクター抵抗33KΩの断線またTrの不良かも知れません。 また帰還抵抗150KΩの断線または半田付け不良も調べて下さい。
B点で音が出たら次はC点で音が出るか調べます。 このAMPはTr1とTr2がループを形成していてTr2のエミッターから150KΩを通してTr1のベースにバイアスを掛けていますから、このループがどこかで切れてしまうと音が出なくなってしまいます。 電流帰還抵抗150KΩが断線していると全く音が出ませんが、Tr2のコレクター抵抗8.2KΩと470Ωが切れていてもC点ではかなり小さいですが音は出ています、(音が漏れているだけ?) しかし8.2Kオームが断線または半田付け不良ではE点に音は出ません。 音が出ないまたは小さい時はTr2のトランジスター不良も疑って下さい。

C点までOKでしたら次はE点で音が出るか確認します、ここで音が出なければコンデンサー0.01uFの不良またはVRやスイッチの配線間違いまたは半田付け不良を疑ってください。
E点で音が出るのにAMPを接続すると音が出ない時は、出カジャックの半田付け不良または出カケーブルの断線などを調べてください。

このFuzz Faceはトランジスターのばらつきにあまり気を使わなくても案外簡単に完成させることが出来ると思います。 試験的にhfe(電流増幅率)の大幅に異なるトランジスター(ゲルマやシリコンやメーカーや型番の異なる物)を何種類か差し替えてテストしましたが、増幅率の違いは有るものの全て正常に動作しました。 回路図どうりに間違い無く作れば必ず動作すると思います。


ゲルマTrを使ったエフェクターでザーノイズが大きい場合
ゲルマTrはシリコンTrに比べてノイズの大きい物が多いです、ゲルマTrを使ったエフェクターで ”ザー”ノイズの大きい物はまずゲルマTrを疑ってください。予備のTrが有るなら取り替えて見るのも良いでしょう。 しかし予備のゲルマTrも全滅と言うことも有ります。
試験的にシリコンTrに取り替えてノイズが出るか調べるのも良いと思います。シリコンTrに替えてノイズが出なければ、ゲルマTrが不良です。
2SBのゲルマなら2SBまたは2SAのシリコンTrに、2SDのゲルマなら2SDまたは2SCのシリコンTrにします、小電力型の物ならほとんどの物が使えます、あまりTrに神経質になる必要はありません。



Fuzz Toneの場合

ゲルマTr使用のFuzz Toneもテスターで電圧を調べるよりもシグナルトレーサーの方が故障発見し易いと思います。 電池がプラスアースですから測定電圧はマイナスになります。



シグナルトレーサーをA点に当て信号音が聞こえるか確認します、出なければこれより前の入力ジャックまでを調べます。 音が聞こえれば次はB点で音が出るか確認します、ここで出なければトランジスターの不良かエミッター抵抗10KΩの断線、または半田付け不良です。
B点までOKでしたら次にC点に信号音が出るか確認します、ここで出なければ1uF不良、コレクター抵抗10KΩの断線、またはTr不良またはこれらの半田付け不良です。 R4 470KΩは断線していても入力信号を大きくすればC点には僅かに(非常に小さい、音が漏れているだけ?)音が出ます、またベースの2.2KΩが断線または半田付け不良でも音は少し小さくなりますが出ます。
C点までOKでしたら次はD点に音が出るか調べます、ここで音が出なければ1uFの不良またはコレクター抵抗10KΩの断線またはTr不良または半田付け不良を疑って下さい。 Tr3のコレクター抵抗10KΩが断線していてもD点には僅かに(非常に小さい 音が漏れているだけ?)音が出る場合があります。 ここまで正常に音が出ていましたら次はE点で信号音が聞こえるか確認します、もし聞こえなければVRやスイッチの配線間違いなどが無いか調べてください。


トランジスターの取り付けもCRの値や配線も間違っていないのに上手く動作しない
こんなことが有るのでしょうか? ”有ります” トランジスターには大きなばらつきがあります、買って来たTrを回路図どうり取り付けても正しく動くのは稀です、仮に動いたとしても本来の動作とは違うかもしれません、また動作しないかもしれません、動作しなければ音は出ません。

それではどうしたら良いのでしょうか?  トランジスターが正しく動作する様にバイアス調整をします。
調整の要領はR4を取り外し100KΩの抵抗と500KΩのVRを直列につなぎR4の場所に取り付けます、500KΩのVRを回して正しく (正常に音が出る様に)調整します、この時ATTACK VRも回して確認します。 調整出来たらこの抵抗をテスターで測り同じ抵抗値(100KΩ+VRの抵抗値)の固定抵抗をR4の場所に取り付けます。

ザー音が非常に大きい
この場合はトランジスターが怪しいです、取り替えて見る以外にありません、シリコンタイプのTrを試験的に付けることは出来ません、このAMPはシリコンTrでは動作しません。
カーボン抵抗を使っていましたら金属皮膜抵抗に取り替えて見ても良いかもしれません。



トレブルブースターの場合

トレブルブースターはTr一石のAMPですが、同じ様にトランジスターを使用したAMPは全く同じ手順で故障箇所の発見をすることが出来ます。
トランジスターはばらつきが有る為、回路図に示した電圧と異なる場合があります。 回路図と同じ電圧にならなくても大丈夫です、故障とは限りません。




出カにプラグを差し込みます、次にシグナルトレーサーをA点に当てて音が出るか確認します、音が出なければ入力ジャックやスイッチ回路を調べます、ここに接続されている910KΩや100KΩが断線や半田付け不良でもA点に音は出ます。 また0.0018uFの値が間違っていても音は出ます。
A点で音が出たら次はB点で音が出るか確認します、ここで音が出なければB点の電圧が4.9V位出ているかテスターで測ります、電圧が出なければコレクター抵抗10KΩの断線または半田付け不良を疑います、電圧が異常に低い時はTr不良かも知れません、コレクター電圧が9V近くある時はエミッター抵抗390Ωの断線または半田付け不良を疑います。 またベース電圧(A点)も調べます、ベースに電圧が出なければ、910KΩの断線または半田付け不良、この時も音は出ません。
ベースからアースに落ちている100KΩが断線または半田付け不良の時は音は正常に出ます。 この100KΩの抵抗は無くてもTrは動作します、しかし取り外してはいけません。
B点で音が出てD点で出ない時はコンデンサー0.0033uFの断線または半田付け不良、またはVRやスイッチの配線間違いを調べてください。 コンデンサーの値が違っていても音は出ます。
D点まで音が出てパワーAMPを接続すると音が出ない時は接続されているケーブルも調べてください。

注意   Trのベースに付いている910KΩは調整が必要の場合があります。 回路図のとうり間違い無く配線したのに上手く動作しないと言うような時は次の様に調整して下さい。
調整は、INに正弦波を入れOUTにはオシロを接続し、出カ波形の上下が対称にクリップするように910KΩを増減します。 (910KΩの代わりに100KΩ+1MΩのVRを仮付けして調整する、調整出来たら100KΩ+1MΩのVRをテスターで測り同じ抵抗値の物を910KΩの場所に取り付ける。) 調整した時の抵抗値が910KΩより大きくずれていて気に入らない、回路図に近い値にしたいと言う時はトランジスターも取り替えて見て下さい。
オシロの調整がめんどうでしたら音を出しながら910KΩの調整をしてもOKです。

音を歪ませ無い回路は  波形を上下対称にクリップするように調整するのが普通ですが、エフェクターの場合は(バッファーAMPやブースターも含む)対称になるように調整していないかもしれません、例えばトレブルブースターのように増幅だけさせて歪ませない回路でも、微妙に上下の対称を崩して音作りをしているかもしれません、(最大出力電圧付近で音が変わってくる)、製作したエフェクターなどを仕上げる時にはこの様な味付けをしても良いかもしれません。



トランジスターを上手く動作させるには  ベースに正しくバイアスを掛けなければなりません。正しく調整すれば必ず動作します、メーカーや型番や国産や外国製も関係ありません。
それでは正しい調整とはどの様な調整でしょうか、これは回路の設計者がどの様な動作をさせるかの違いで変わってきますから、これが正しい、これでなければいけないというものは無いと思います。
トランジスターのhfeが指定されている時はなるべくその指定値に近い物を使用する様にします。

HiFi AMPは歪みを出来るだけ無くすように設計や調整をしますが、エフェクターや楽器のAMPはそう簡単ではありません、とりあえず回路が動作するようにベースのバイアス抵抗を調整した後に、音を出しながら自分が一番好ましいと思う音になる所で固定すれば良いと思います。



半田付け不良を起こさないようにするには  部品の足(リード線)をよく磨いてから半田付けをすればほとんどの場合防ぐことが出来ます、特に古いゲルマニュームTrは足が鉄線で出来ている物が多く錆び(酸化)が出ている物も少なくありません、錆びが出ていると言っても錆びて黒くなっているわけでは有りません、足の色が少しくすんでいるような物、足の色に艶が無いような物はそのまま半田付けをしても上手く付きません、付いているように見えるだけです。
Trの足を磨くにはラジオペンチでTrの足の根元をしっかり挟みTrに無理な力がかからない様にして紙ヤスリで磨いて下さい。(ピンセットでしごいてもOK) 古くなった抵抗やコンデンサーも同じ様にして磨いて下さい、コンデンサーも鉄線を使っている物が意外と多いです。 鉄線かどうか調べるには磁石を付けて見ればすぐにわかります。
(2006/02/10)

--はじめに戻る--