MAESTRO Fuzz tone



ゲルマTrで製作しましたが10年も前のことなので何という型番のTrで製作したのか記憶がありません。
この MAESTRO Fuzz tone は温度によって増幅率が大幅に変化します、波形も変わります、室温が20度以上でないと調子が出ません。低い温度の時はFUZZの音になりません、入力された音がほとんど歪まずにそのまま 出力されます。
ゲルマTrを使用したエフェクターは同じような特性を示すかもしれませんから冬に暖房の無い部屋で使用するときは注意が必要です。
(2001/12/18)

周波数特性のグラフはこちらです。


 Fuzz tone レポート

Fuzz Faceをレポートした勢いでFuzz toneも製作しデーターを取ってみました。
今回はいつも使っている傾斜型のケースは使用せず弁当箱型の物にしました。 型番はタカチ YM-180で 18cmX13cmです、少し大きめですがスペースは十分あるので配線は非常に楽に出来ました。

普通、Fuzz toneは1.5Vで動かしていますが、写真には乾電池2本の3Vが写っています、理由は二つあります、一つはLEDを付けたから、二つ目は3Vで動かした方が良いと思ったからです。(理由は下に書いてある)
インジケーター用のLEDは高輝度赤色を少ない電流で点灯させています、輝度の少ない物を大きな電流で使用したのでは電池が早くなくなってしまいます。

基板はありあわせの物に無理矢理、部品を取り付けました。使用したトランジスターは2SB54(ゲルマ)で、これは持っていたから使っただけです、回路はオリジナルどうりで変更はありません、電池もプラス アースです。

回路図を見ますとQ1はエミッタ フォロアーにして入力インピーダンスを高めています、Q2はベースにバイアス調整用のVRを付け、ここで歪みの調整を行っています。
Q2、Q3はエミッタ抵抗がありませんが、これは電源電圧が1.5Vしかありませんので、少しでも抵抗によるロスをなくすためにこの様にしたのかも知れません。

2SB54が3個しかなかったので増幅率の違いでどの様な差が出るのか調べることが出来ませんでした、始めからたくさん手持ちのあるTrにすればよかったのですが・・・・・ これを取り外したら使えなくなってしまうかも知れません。 (熱でTrの特性が変化したり、壊れてしまうかも知れないのでTrは取り替えません、 と言いながら実はめんどうだから)  手抜きレポートで ゴメン !

 


電源電圧      1.5V または 3V
増幅率        52倍  (140倍 3V)
最大出力電圧   480mV (1.1V  3V)
周波数特性     350Hz〜10KHz (-3dB)
入力Z        165Kohm (3KHz)
出力Z        10.5Kohm
残留ノイズ     0.3mV  (0.5mV 3V) (入力ショート 各VR最大)
測定温度      25度


電源電圧を2倍にしたら増幅率が2.7倍になり、それに伴って最大出力電圧も約2倍になりました 、増幅率や最大出力電圧が大きくなってもエフェクターではそれがメリットになるわけではありません、最大出力が大き過ぎるのは、かえって使いにくくなるだけです、大きくなったら、VRで絞らなければなりません。
ステレオAMPのように大きな入力信号があっても出力信号が歪まないように、許容入力(ダイナミックレンジ)を大きく取らなければならない場合は高い電源電圧が必要ですが、ディストーションやFuzzのように始めから信号を歪ませる目的の場合は、トランジスター等が動作して目的の音が出るのであれば1.5V位の低い電圧でも良いわけです。
また最大出力電圧も数百mVあれば十分でしよう、但し次に繋げるパワーAMPの入力感度が低すぎる場合は別ですが。

周波数特性は、低域と高域はカットされていて中域のみの帯域になっています、必要のない帯域は、始めからいらないと言うわけです。
残留ノイズはゲルマTrにしては、まあまあの値で、パワーアンプをフルボリュームにしても当然ハムやノイズは聞こえません。

このFuzz Faceも温度の違いでどの様に特性が変わるのか調べて見ます。
下の写真 左側は室温25度の時の出力波形、入力10mVで出力は400mV、中側は50mV入力で480mV出力のものです、入力20mV以上では出力電圧も波形も大きな変化はありません。 (f=3KHz  ATTACK VRは最大  電源1.5V)

写真右側はATTACK VRを9時の位置にした時のもので、入力10mV、出力230mVでした、波形の変化があるのはATTACK VRが12時の位置から左へ回した時で、12時から最大まで回しても変化はありませんでした。
ATTACK VRを最小にするとほとんど増幅しません。

 室温25度の出力波形                    VRが9時の位置

下の写真は室温10度の時のものです、(Fuzz toneを冷蔵庫で冷やして測定した) 左側は入力10mV、出力25mV、右側は入力50mV、出力130mVの時の出力波形で増幅率は約2.5倍しかありません。 写真の波形は見易いようにオシロの垂直ゲインを拡大して撮っています。
今回製作した物も低い温度は苦手のようです、元気が出るには20度以上が必要です、しかし暑すぎるのもよくありません。
オリジナルのFuzz toneも同じ様な温度特性かもしれません。 (f=3KHz  電源 1.5V)

 室温10度の出力波形   

今回も30度以上の温度ではどうなるのかテストしてみました、基板とTrをヘヤードライヤーで加熱して行った時の写真を下に載せました。
左側が電源電圧1.5Vの時でほとんど増幅していませんが、3V(右側の写真)の時は約35倍増幅しています、このまま熱しつずけたら、波形は小さくなってしまいましたのでこれ以上は止めました。 Trが熱暴走して壊れてしまうともったいない。
このFuzz Toneも真夏にケースが焼ける所での使用は要注意。

 30度以上の時の出力波形、左1.5V、 右3V

Fuuz Toneには3Vバージョンが有る様ですから、電池二本の3Vの時も調べてみます、3Vの回路は1.5Vと少し違うようですが、今回は定数を変更せずに3Vを繋いで測定しました。
室温25度のとき、増幅率は約140倍ありました。  それでは温度が10度の時はどうでしょう。下の写真がその出力波形で、左側が入力10mV、出力380mV、右側は入力20mV、出力1Vの時のもので、これ以上入力信号を増やしても、波形は少し角張ってきますが、大きな出力増加はありませんでした。(低い温度でも元気)

以上のことから、電源電圧3Vタイプのほうが温度変化に対しても、正常に動作する範囲が広いことが解かりました。

 電源電圧3V 室温10度の出力波形  f=3KHz

ここで使用したTrは2SB54でしたが、別の型番や高増幅率の物にした場合は、また違った結果が出たかも知れません。
現在では希望するゲルマTrがいくらでも手に入るわけではありません、偶然、手に入ったゲルマTrは大切に使ってあげましょう。

温度差で音はどう違うのか、また1.5Vと3Vで音の違いはどうなのかは、あなたご自身で確かめてください。 ゴメン !

注意   オリジナルFuzz toneのデーターが今回測定したものと同じかどうかは解かりません。
(2003/11/15)

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