パソコン オシロ用 アダプターの製作  < AD−1 >

AMPの調整をするとき、オシロの垂直ゲインを変えたい時があります、パソコンをオシロスコープの代わりに使ったとき、この操作が案外面倒なので、楽に操作できるアダプターを製作します。
オシロスコープを表示するソフトは、efu氏のフリーソフト WaveSpectra を使わせていただきます。この様な優秀なソフトを使わせていただけることに感謝しましょう。

回路説明
発振回路は位相測定器にも使用した、ツインT回路です。一石で発振回路ができ、波形もきれいです。
使用したTrは2SC372ですが、これ以外のものでもかまいません、うまく発振しない時は(R3) 1KΩを増減してください、発振周波数は約900Hzです、発振出力電圧はSW1をONにした時に約600mV出ていました。 またSW1をOFFにすれば出カ電圧を約100mVに落とすことが出来ます。 発振回路を作るのがめんどうでしたら、1KHz位の信号を録音したテープで代用できます。
次の垂直AMP(オシロの垂直入力に接続するのでこの様に書きましたが、ただのAMPです) は(Tr3) 2SK30AGRを使用し約4倍増幅しています、入力側につけたVR-100KΩで信号の大きさを調整しています。

調整
FETの動作点は信号を入れたとき波形の上下が同時にクリップするようにソース抵抗(R4、R6)を増減します、以上の調整は先に発振回路を作り、この信号を使ってつぎのFETのAMP部分を調整します。
プリント基板はサンハヤトの穴あき基板を半分に切って使いましたが、切らずに使った方が部品の取り付けが込み合わずに作りやすくなります。


パネル上面は上の写真のようにしました、左上が電源SW、その下が発振部、右側がFETのAMP部分です、AMPの出力端子はイヤホンジャックにしましたがここへ、クリスタルイヤホンを差し込めば音声をモニターすることも出来ます。



動作確認
始めに、AMPやエフェクターを測定するとき接続するケーブル類は何種類かは作っておいてください。
OSC-OUTとAMP-INをケーブルで接続します、OSC LEVEL-VRは最大に、AMPのLEVEL-VRは最小にしておきます、AMP-OUTとコンピューターの音声入力端子間をケーブルで接続します、次にコンピューターの電源を入れ WaveSpectra の画面を出します、 画面右上の設定ボタンをクリツクして下の写真左の画面を出します、縦軸倍率X2倍、横軸倍率X20倍に設定します。

画面上部にオシロスコープが下部にスペクトラムが表示されていますから、マウスでラインを引き下げてオシロ部分を広げてください、次に画面上部の赤丸のついたボタンをクリックします。
本機(AD-1)の電源を入れます、AMPのLEVEL-VRを少しずつ回して行くとサイン波形が表示されます。LEVEL-VRで波形の大きさが変化するのを確認します。(写真右)
実際の測定ではこのVRで見やすい大きさの波形に調整すれば良いでしょう。
900Hz一波しかありませんから完璧なAMPの調整は出来ないにしても、実用になる調整はこれ一台で出来ると思います。



 シグナルトレーサー用プローブ

おまけ
本機はオシロスコープの垂直ゲイン調整用アダプターだけでなく、故障発見の道具(シグナル トレーサー)としても良い働きをしてくれます。
はじめにシグナルトレーサーの時に使うプローブを作ります、用意するものは、細いシールド線を80cm位、黒色の、みの虫クリップ1個、黒色の細い線60cm位、1〜1.2mm位の銅線5cm位、ピンプラグ1個、それにいらなくなったボールペン一本です、これを上の写真のように作ります。
シールド線のHOT側(芯線)に銅線を半田付けし、ボールペンのキャップに穴をあけて銅線を差し込みます、測定中に銅線が中に押し込まれてしまわない様に少し曲がりをつけます、(写真参照)  シールドの編み線は切り取って熱収縮チューブで絶縁しておきます。(ペン先のアップ写真を参考にして下さい)

使い方は、故障したAMPやエフェクターの入力に信号を入れます、本機のAMP-INにプローブを、AMP-OUTにイヤホーンかオシロを接続します、プローブの、みの虫クリップをアースにはさみます、そして故障したAMP等の入力から順番にプローブの針先を当てて信号の有無をイヤホーンかオシロで確認をして行きます、音の出なくなった所が故障箇所です、慣れれば非常に簡単に故障箇所を発見できます。

注意
AMP-INの入力コンデンサー(C6 0.1uF)の耐圧以上の電圧をかけることは出来ません、高い電圧の場所を測定する場合は、その電圧に耐えられるコンデンサーにしてください、保護回路も必要かもしれません。本機の場合は0.1uF/50Vを使用しました。


本機のFETで4倍に増幅しているアンプ部分(シグナルトレーサー部分)はどれ位の音まで聞こえるのでしょうか? FET AMP有り(左)、AMP無し(右)に発振器とクリスタルイヤホンを付けて聞いてみました。 発振周波数は1KHzです。
FET AMP有りは約0.5mVでも音を聞くことが出来ます、またAMP無しでは1mVの音までは聞くことが出来ましたから、AMP有りはもちろんAMP無しでもシグナルトレーサーの役目は十分果たすことがわかりました。



故障箇所を出カ側から調べるには
今まではシグナルトレーサーを使ってアンプの入カ側から故障箇所を調べて行きましたが、今度は下の回路図で出カ側から故障箇所発見を行ってみます。 用意する物はクリスタルイヤホンと発振器(1KHz位)または信号の出る物(ラジカセの音楽でもOK)、発振器またはラジカセの出カには、直流入カ防止用に0.1uF/50V位のコンデンサーを付けておきます (高電圧のアンプの回路はコンデンサーの耐圧に注意)。 発振器のアースはアンプのアースに接続します。
次に故障したアンプの出カにイヤホーンをつけます。 アンプの電源を入れ、A点に信号を入れて音が聞こえるかイヤホーンで確認します。
OKでしたら次にB点に信号を入れて音が聞こえるか調べます、ここで音が聞こえなければ1uFが怪しいです。 ここもOKでしたらC点に信号を入れて、イヤホーンで音が聞こえるか調べます。 信号音が聞こえなければ、これより出カ側(FET付近)が故障しているわけです。 この様にして入カまで信号を入れながら調べて行きます。


イヤホーンしか持ち合わせが無い時は
上図の回路で、出カにイヤホーンを付けます、アンプの電源を入れてC点を手で触って見ます(ピンセットの様な物で触っても良い)、この時イヤホーンからノイズが聞こえれば、これより後ろの回路は大丈夫と判断します。 この方式はブロックごとにしか判断できません。 ただしFET回路や真空管回路の様に、入カインピーダンスの高い回路で無いと分かり難いです。
この入カ側を触る方法はブースターやプリアンプなどには良いですが、出カの大きなパワーアンプの時には注意をして下さい、いきなり大きな音が出てイヤホンやスピーカーや耳を壊します。 また真空管回路の高電圧が掛っているところでは、間違ってプレート回路を触ると電撃(しびれる)を受けますから注意が必要です。



AMPの故障修理にはシグナルトレーサーとオシロスコープとどちらが良いか?
音が出ないと言う故障の時に使う道具は、シグナルトレーサーでもオシロスコープでも同じような使い方が出来ますが、私はシグナルトレーサーの方が使いやすいと思います。
オシロはプローブを部品の所に当ててから、波形を見なければなりません。この時プローブの先端の針先が滑ってアースに接触して高電圧がショートする事故がありますが、シグナルトレーサーは音を聞いていますから、プローブを当てた所から目を離さなくても測定できます。
このシグナルトレーサーを実際に使ってみれば故障箇所発見が非常に簡単に出来ることがおわかりいただけると思います。



パソコンを測定器として使う
入手したFETやTrはかなりのばらつきがあります、そのまま取り付けても正しい動作はしないかも知れません、調整は必ず必要です。パソコン オシロで調整および動作確認をしておけば完璧です。
これから自作をしようと思っている方は、パソコン オシロアダプターを製作することを薦めます、このアダプターを作っておけば必ず役に立ちます。 (オシロスコープを持っていれば必要ありません)
この、パソコンオシロ アダプターは便利と言うことだけではなくて、パソコンの保護の役目もしています。 それは、このアダプターで測定をしている時、プローブが+電圧の掛かった場所も測定の為に接触させます、本機はこの+電圧が直接パソコンの入力に掛からない様にしています。
ICやTrのエフェクター等ではあまりありませんが、電圧の高い所、例えば数十ボルト、百数十ボルトも掛かる様な所の測定は、このパソコンオシロ アダプターでは行わない方がよいでしょう。下手をするとパソコンを壊します。

抵抗やコンデンサーについて
エフェクターやAMPを作るとき、抵抗やコンデンサーを基板に半田付けしますが、私は半田付けをする前に、抵抗は必ずテスターで抵抗値を確認しています。
コンデンサーの場合はアナログ テスターでコンデンサーを計ります、(一瞬針が振れるだけで、どれ位の容量かはわかりませんが、慣れれば容量の見当は付きます) テスターの針の振れ具合で良品かどうかの判断をしています、コンデンサーも半田付けする前に必ずテスターを当てます。
FETやTrは選別が必要な場合は先に選別をしておきます。選別をしない時は、基板に付けてから調整しています。 ダイオードも半田付けをする前に、良品かどうかの確認を必ずしています。
真空管 はヒーターの導通以外はテスターで判断できません。 (真空管テスターという物もありますが・・・)

FETの調整  パソコンオシロ アダプターまたは発振器とオシロが必要です。
FETのソース抵抗を調整する時は、ソース抵抗の代わりに抵抗値が少し大きめのVRを付けます、入力側に発振器を接続して1KHz位の信号(正弦波)出カします、発振器が無い時は正弦波をを録音したカセットテープでもOKです。 信号を少しずつ上げて行き、出力波形が上下対象にクリップするようにオシロの波形を見ながら1KΩのVRを調整します。 最適値に調整できましたらVRの抵抗値をテスターで測り、同じ抵抗値の固定抵抗を取り付けます。 この時、FETによっては対象にならない場合があります、その場合は波形を観測しながら最良点と思われる所で固定します。

調整はいつも対称にクリップさせるのでは有りません、特にエフェクターを製作するような時は、非対称にクリップさせることが良くあります。どの様に調整するかは回路にもよります。

動作確認
基板に一つのブロックの半田付けが終わりましたら、測定をして、調整および動作の確認をします、確認ができましたら次のブロックを作ります。 この様にすれば、完成時に動作しなかったと言う様なことが少なくなります。
真空管アンプの場合はブロックごとの動作確認は行いません、全部出来上がってから確認します。(私の場合ですが)
エフェクターやアンプが完成しましたら、必ず測定器(パソコンオシロ アダプター)で測定(動作確認)をします。また正常動作時の各電圧を回路図に記入しておきます。

測定    これは簡易の測定の説明ですから本格的に行いたい時は、専門書を見て下さい。
エフェクターが完成しましたら測定も行います。 オシロ、発振器またはパソコンオシロ アダプターとミリボルトメーターが必要です。 ミリボルトメーターは、あれば役に立ちます。無くても良いです。

(発振確認)  エフェクターの出力端子にミリボルトメーターとオシロを接続します。 電源を入れ、エフェクターの入力を、ショート、または開放にして発振していないことを確認します。 DIST VRやTONE VRがある時はそのVRも回して調べます。(高い周波数で発振している場合は、パソコンオシロ アダプターでは確認できない場合があります)  エフェクターによっては意図的に発振させている物もあります。

(入出力特性  増幅率)  INから正弦波(1KHz前後)を入れます、電圧は1mVや10mVと言うように切りの良い数値にすると計算し易いです、出カ電圧を測定して入カと出カの差を求めます。 この時出カ波形がクリップしていないことを確認します。

(最大許容入力と最大出力電圧)  INから正弦波(1KHz前後)を入力し、出カ波形を監視しながら入力電圧を上げて行きます、出力波形がクリップする寸前の電圧が最大出力電圧になります。 またこの時の入力電圧が、最大許容入力になります。

(残留ノイズ)  エフェクターの入力をショートします、(抵抗を付けることもある) LEVEL VRは最大に、その他のVRは中間にします、エフェクターの出力にミリボルトメーターを接続し電源を入れ、エフェクター自身から出るノイズを計ります。 残留ノイズは0.5mV以下にしたいところです。 増幅率が非常に大きい時は、ノイズが1〜5mV位になる場合があります。
この場合のノイズと言うのは”サーまたはザー”という音で、”ブーン”と言うハム音は問題外です。 これは真空管AMPも同じです。

(周波数特性)  10Hz〜20KHzの間ならWaveSpectraとWaveGeneで測定することが出来ます。 それ以上の周波数は広帯域の発振器とミリボルトメーターが必要です。

(歪率測定)   これは歪率計と低歪の発振器が必要ですから今回は行いません。
(2006/03/10)

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