フェンダー ツイードデラックス 5E3 サービスノート

フェンダー ツイードデラックス 5E3を製作したが音が出ない、調子が悪い、故障してしまったと言う時に見ていただくページです。

用意する物は
1) テスター-------------デジタルでもアナログでも良いです。
2) ラジカセ-------------発振器の代わりです、信号は音楽でも発振音でもOKです。
3) ダミー抵抗-----------8Ω/10Wのセメント抵抗を1本用意します。パワーAMPの出カ測定のページを参照してください。
4) VR回路--------------これは、真空管オーバードライブAMP サービスノートの時に製作する同じ物です。
5) 接続ケーブル--------マイクプラグやpinプラグの付いた物を各種用意してください。
6) 高電圧真空管回路用シグナルトレーサー

はじめに下図の様に接続して下さい。



出カにはダミー抵抗を接続します。パワーAMPの音量VRは最小にします。AMPの電源を入れます。
はじめにパワーAMPの各電圧が正常かテスターで確認しておきます、電圧に異常な所があればその部分を調べます。 出カ電圧が低い時は整流管不良を疑います、スペアーの整流管があれば取替えて見ます。 電圧が大体OKならば今度はシグナルトレーサーで調べて行きます。

ラジカセまたは発振器から適当な信号(音楽でも良い)を出しておきます。
シグナルトレーサーのみの虫クリップをAMPのアースに挟みます、プローブをA点に当てて音が出ているのを確認します。ここに音が出ていなければ入力ジャックか接続ケーブルの不具合を調べます。音が出ていれば次のB点にシグナルトレーサーを当てます。
B点に音が出ていなければテスターでもう一度電圧が正常か確認します、電圧が出なければプレート抵抗100KΩの断線を疑います、抵抗が断線していなければB電源回路を調べます、電圧が異常に高い場合はカソード抵抗の断線または半田付け不良を調べます。 これらで無ければ真空管の不良が考えられます。
B点の電圧は約53V、C点の電圧は約2.4V

ここまで正常でしたら次にD点にプローブを当てます、まだ音は出ません。AMPの音量VRを少しずつ回して音が出るか確認します、(音量は大きくしなくても良い)出なければ0.1uFのコンデンサー不良、または半田付け不良、それで無ければVRの周りを調べます。

ここまで正常でしたら次にE点で音が出るか確認します、(音量VRは適当なところまで回して音を出しておく) 音が出なければプレートに電圧が掛かっているかテスターで調べます、(はじめに各電圧をテスターで確認していますが何度も見直します)  電圧が出なければプレート抵抗100KΩの断線を疑います、抵抗が断線していなければB電源回路を調べます。 E点の電圧が異常に高い場合はカソード抵抗の断線または半田付け不良を調べます。 これらで無ければ真空管の不良が考えられます。  E点の電圧は約135V

ここまで正常でしたら次にF点にプローブを当てて音が出るか確認します、出なければ0.1uFのコンデンサー不良、または半田付け不良です。

ここまで正常でしたら次にG点、H点に音が出るか調べます、出なければプレートとカソードに電圧が出ているかテスターで調べます、プレートG点は約172V、カソードH点は約40Vです。
G点に電圧が出なければ、プレート抵抗56KΩの断線または半田付け不良を調べます。
またプレート電圧が異常に高い(210V位)場合は、カソード抵抗の断線または半田付け不良を疑います、これらで無ければ真空管を取替えて見ます。

ここまで正常ならば次にI点、J点に音が出ているか調べます、ここに出なければ0.1uFと1.5KΩの断線、半田付け不良を調べます。

ここまで全て正常ならば次にL点、M点に音が出るか調べます、音が出なければプレートに電圧(約297V)が掛かっているか調べます、電圧が掛かっていないか異常に低い場合は出カトランス一次側の断線を疑います。またプレート電圧が異常に高い場合はカソード抵抗の断線または半田付け不良も調べてください。
6V6に電圧が掛かっていない、または電流が流れていない場合は回路全体の電圧が上がってしまいます。この場合ははじめにテスターで電圧測定をした時点で気がつくと思います。 正常時M点のプレート電圧は約297V、K点のカソード電圧は約22.2Vです。 これらで無ければ6V6の不良を疑います。6V6を取り替える場合は2本の特性がそろったペアー管を使用して下さい。

ここまで正常でしたら次に出カジャックの所で音が出るか調べます、ここで出なければ出カトランス二次側巻き線不良かもしれません、しかしこの故障はほとんど無いと考えてよろしいと思います、それでも音が出ない場合は半田付け不良を疑ってください。 ここまで正常でもスピーカーを接続すると音が出ないと言う時は出カジャック不良または半田付け不良、またはスピーカー ケーブル不良またはスピーカーの不良かも知れません。

整流管5Y3GT不良の場合は電圧が出ないまたは異常に低い症状になります。 N点の電圧は約307Vです。
5KΩ(4.7KΩ)/3Wの抵抗が断線すると6V6のスクリーングリッドに電圧が掛かりません、また12AX7にも電圧が掛かりません、音も出ません。 22KΩ/2Wの抵抗が断線すると12AX7に電圧が掛かりません、音も出ません。

真空管のプレート(高圧部分)を測定する時テスター棒が他の部品やアースと接触しないように十分注意して下さい。
音は出るが出力が小さい場合は出カ管や整流管の不良が考えられます、予備の球が有るなら出カ管や整流管を取り替えてください。



ノイズが出る (出ないようにするには)
本機は増幅率が大きいためにある程度はザーと言うバルブノイズが出ます、”ある程度”と言ってもわかりにくいのですが、ミリボルトメーターで測った場合1mV〜5mV位は針が振れると思います、このノイズの大半は初段から出るもので、試しにLEVER VR(1MΩ)を絞って見て下さい、スピーカーからのノイズは全く聞こえないと思います。 ほんの少しはサーと言う音がするかもしれませんが、それ位でしたらOKです。
このノイズは初段の真空管を取り替えただけでもかなり変わります、また、グリッド抵抗(1MΩ)とプレート抵抗(100KΩ)をローノイズの金属皮膜抵抗などにしてもノイズが少なくなると思います。 12AX7が複数本ある場合はその中から一番ノイズの少ない物に取り替えてください。 12AX7の代わりに12AU7や12BH7Aに取り替えても良いと思います、増幅率は少し下がりますがノイズも減ります。
微小信号を増幅する初段管はハムやノイズを拾い易いです、シールドケースをかぶせるのも効果があります。

ハムが出る (出ないようにするには)
ブーンと言うハム音が出る場合、これはいくつか考えられます、まず一つは電源トランスから出る磁束が信号線や電圧増幅管に影響を与えている場合ですが、これはシャシー上のトランスや真空管の配置や向きが不適当な時に起こります。 配置が悪い時は作り直すしか方法がありません。
シャシー上の配置は、電源トランスの近くに入力回路や初段管を置かないようにします。 このAMPで使うノグチの電源トランスは防磁対策が施されていますから、あまり心配しなくても良いと思います。

二つ目は真空管のヒーターから発生するハムですが、これは真空管のヒーター、カソード間のリケージ電流や電磁誘導などがあります、この場合は真空管を取り替えて見るのが良いと思います。 原因がこれらでは無くても、例えば微小信号を大きく増幅する様な時は僅かなハム音も大きく増幅してしまいます、この様なときは電圧増幅管のヒーターを直流点火した方が良い場合があります。 また真空管のヒーターに数十ボルトの電圧を掛ける「ヒーターバイアス」と言う方法もあります、ヒーターハムから逃れる一番良い方法は直流点火です。

三つ目はB電源にリップルが乗っている場合です、これは平滑用の電解コンデンサーの容量が足りない場合、またチョークトランス(チョークコイル)などが無く十分にリップルが取れない様な時に起こります。
電解コンデンサーの容量が足りない時は容量を増やせば良いと思います、但し整流管を使った物は整流後に入れる電解コンデンサーの容量が指定されています、指定値よりも大きいと整流管を壊します。
電解コンデンサーの容量を増してもまだハム音が僅かに残る場合はチョークトランスを入れてみるのも良いと思います、本機にはチョークトランスが入っていませんが、出カ段がP-P(プッシュ、プル)でリップル等は打ち消し合って出て来ませんから大丈夫です。 シングルAMPでは注意が必要です。

四つ目は配線の引き回し不良によるハムです。 これはAC電源回路や交流点火のヒーター配線と信号回路の線を一緒に這わせているような時におきます、AC回路と信号回路とは出来るだけ離して配線するか、どうしても接近する様な場合は直角に交わるような工夫をして下さい。

五つ目はアース処理が不適当な為に出るハムです。 各増幅回路のアースはブロックごとにまとめます、アースに落とされた電流はそれぞれが干渉しないように配線します。 一点アースでなくてもハムの無いアンプは可能です。

上に挙げた例に注意して製作すれば必ずハム、ノイズの少ないアンプが完成します。
(2007/04/10)

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